パーキンソン病診療メモ 1 「身じろぎ」の不思議|横浜市・桜木町の内科「のげ内科・脳神経内科クリニック」

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パーキンソン病診療メモ 1 「身じろぎ」の不思議

「身じろぎ」という言葉を日常で使うことは稀だ.
広辞苑をひくと「体を少し・わずかに動かすこと」や「身じろぐこと」とある.
「身じろぎもせず(じっと動かない様子)」という形で使われることが多いともあり、その通りだ.

なぜ、身じぎについて話すかといえば、私が毎日診ているパーキンソン病のことである.

大道芸で石像のように全く動かない芸を「スタチューパフォーマンス(Statue Performance)」というらしい.
生き生きとして今にも動き出しそうなのに、「身じろぎもせず」という不自然さに面白みを感じるから「芸」が成立する.

さて、わが日本神経学会のホームページによれば、パーキンソン病の4徴とは、
①静止時振戦
②筋肉が固くなる筋固縮
③動作が鈍くなる無動または寡動
④転びやすくなる姿勢反射(保持)障害 である.

パーキンソン病の患者さんの「akinesia 寡動」がこのスタチューパフォーマンス的である、と日々の診療の中で思う.

ある日の初診外来の場面である.パーキンソン病の患者さんは、対面して私が話していても、
「身じろがない」.腕を組んだり、首をひねったり、神経質に髪を触ったり、
緊張でつばを飲み込んだり、しない.鼻をすすることもなく、瞬目もすくない.

この瞬目のない目をreptalian stare(爬虫類の目)と表現したのは約80年前
(Behavioural Neurology, 1991,4, 181-187)だが、今ではデリカシーにかける、所謂アウト、な表現だろう.
現在ではmasked face(仮面様顔貌)が一般的だが、患者さんが動かないのは実際は顔だけではない.

患者さんの身じろがなさっぷりは前述のStatue Performerのそれである.
今にも動き出しそうなのに、身じろがない.患者さんにその意図はないし、身じろがないことに気がついていないことが多い.

これは脳内のドパミン不足に起因するので、毎週ドパミン前駆体であるレボドパを徐々に増やしてゆくと、
通常の「身じろぎ」がもどり、彼らの「Statue Performance」が終わるのである.

逆にレボドパを増やしすぎると今度は「ジスキネジア」という、全身を舞踏のように回転させる不随意運動がでる.
身じろぎが溢れ出た状態とも言える.

つくづく、不思議な病気を私は日々診ている.

 

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