パーキンソン病
ヒトが身体を動かそうとすると、脳から神経伝達物質のドパミンが分泌されて、全身の筋肉をスムーズに動かします。パーキンソン病は、αシヌクレインという神経伝達物質が神経細胞に不適切に蓄積されることで毒性を持ち、ドパミンを産生する細胞数が元の60%に減り、ドパミン量が元の20%以下に減少することで発症するとされます.これは自動車に例えると「ガス欠」状態であり、まだ「故障」を意味するわけではありません。「L-DOPA」を内服し、ガソリンにあたるドパミンを補充することで、もとに近い状態にもどすことが可能です.またパーキンソン病は決して稀な病気ではありません。本邦では診断されていない人を含めてると65才以上の「100人に1人」がパーキンソン病とも言われています。
パーキンソン病の症状は十人十色であり、また時期により症状も良くなったり悪くなったり変動するものです.当院は受診毎にその人のその時々の症状に合わせて内服を微調整するオーダーメイド処方を行っております.また、後々までL-DOPAが効果を持続するように現在の量をなるべくセーブし、その代わりにアゴニスト・MAO-B阻害剤等を処方し、リハビリでしっかりと体づくりを行います.有酸素運動をはじめとするリハビリは疾患修飾療法として内服薬の効果を最大限に引き出しながら、パーキンソン病や認知症の進行を遅らせることが証明されています.当院は基本的なリハビリをベースにZWIFT(バーチャル自転車レースアプリ)やボクシングなど、「楽しく挑戦」しながら自然なドーパミン分泌がされるようなプログラムを用意しております.是非、ご参加ください。
パーキンソン病は内服薬を適切に調節すれば健常時と変わらぬ見た目、生活を取り戻すことができます。
パーキンソン病は院長・渡邊が神経内科を志すきっかけとなった疾患であり、当院の最も重視する治療対象の一つです。内服調整については日々文献をあさり、研鑽を重ね、結果的に「いままであきらめていた」震えが止まった、動けなくなる時間が減った、幻視が見えなくなったという声を多数いただきます。パーキンソン病でも自立した生活が送れる患者様が一人でも増えるよう、また、その時間が少しでも長くなるようにこれからも、精進して参ります。
発症から在宅まで
パーキンソン病の患者様の診断から、内服調整、リハビリ、在宅まで、すべての期間をサポートできることが当院の特徴です。パーキンソン病は時に診断の難しい病気ですが、頭部CT、神経診察、内服への反応を見ながら診断し、総合病院で核医学検査をアレンジして、最終的な診断を行います。
抗パーキンソン病薬の細かい調整
パーキンソン病の症状改善薬の中でもL-DOPAが最もよく効くとされますが、最初から大量使いすぎると、徐々にL-DOPAの反応が悪くなります。最近の研究でL-DOPAの量を300mg以下にすることで、この反応の低下(あるいは過剰反応)が生じるのを遅らせることが研究でわかっております(Brain 2014: 137; 2731–2742)。よって、L-DOPAは少量で開始、維持して、その他の薬、すなわちアゴニスト、MAO-B阻害薬、COMT阻害薬、ゾニサミド等を追加することで、L-DOPAを温存しながら、症状を改善させることができます。
パーキンソン病のリハビリテーション
パーキンソン病の治療において、「内服薬」と「リハビリ」は車の両輪です。内服薬だけではドパミンが補充されるだけ。筋肉や関節や平衡感覚は鍛えられません。
ドパミンを補い、大きく体を動かして、大きな声を出すことで、筋肉が発達し、関節可動域が広がり、動きやすい体ができあがります。この時、リハビリの内容は、エビデンス(科学的根拠)のあるものを選択することが大切です。太極拳、LSVT-BIG、LSVT-LOUDはとても効果的とされ(BMJ 2024;386:e078341)、当院でも9Fのリハビリ室で、定期的に太極拳やLSVTのプログラムを実施しており、パーキンソン病の患者様を中心に参加が可能です。また「VAST-REHAB」という仮想現実を用いた運動プログラムも実施可能です。
パーキンソン病の訪問診療
パーキンソン病で通院が困難な方には訪問診療(原則月2回)を行います。パーキンソン病は進行度だけでなく、季節、環境により必要な内服量が異なる、というのが当院の考えです。内服調整を細かく行い、身体の動きにあったケアマネと連携して介護器具の処方も行ってゆきます。
スタッフ
のげ内科・脳神経内科クリニックには脳神経内科専門医、パーキンソン病学会認定看護師、LSVT-BIG&LOUD 認定セラピストが常駐しており、パーキンソン病を全力で支える体制があります.診療の御相談などは平日午後を中心に承っております(午前は込み合っており、お勧めいたしません)。